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随筆その5
「海上のヨットと車椅子」

前立腺ドック・PSAドック
棚橋よしかつ+泌尿器科
仙台市青葉区国分町2-2-11
TEL: 022-722-0028
2005年2月17日更新 携帯版(http://0028.jp/k)
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     ハンディキャップのある方々にヨットを楽しんでもらう
     企画をお手伝いした。その日は快晴のよい天気であった。
     島々の松の緑がさわやかで、遥か連山の頂にはすでに
     白い雪がまぶしかった。

     ただ、風が強く、波も高かった。車椅子の人たちにも、
     容赦なくしぶきが飛んできた。でも、びしょ濡れに
     なりながらも、笑顔が絶えなかった。
     みな、「また、ぜひ乗りたい」と言ってくれた。

     車椅子の人たちにヨットに乗っていただくのも、
     実は勇気が必要だった。海上でのスポーツだけに、
     安全にことをはこぶには、周到な準備が必要である。

     車椅子で積極的にスポーツに取り組んでいるTさんと
     何度も打ち合わせをし、計画を練った。彼の申し出は、
     「ほとんどのことは自分でやれると思うので、よっぽど
     生命に危険があるときのみ手伝って欲しい」というものだった。

     ある日の打ち合わせが終わり、彼がお手洗いに行きたい
     といった。何かあってはいけないと思い、一緒について行った。
     このときも、実はまったく手を差しのべる必要はなかった。

     それなのに、彼といっしょにエレベーターに乗った瞬間、
     ただいっしょに乗っているだけなのに、なにか"得もいわれぬ
     うれしい感情"が体の内側からこみあげてきた。

     とても不思議なのだが、"とにかくうれしかった"。
     本当は何にもしていはしないのに、何かすごく良い事を
     しているような気持ちになった。

     私たちは常日頃、医学を通じて患者さんの診断や治療を
     行っている。患者さんに対し優しい気持ちで接するのは
     当然のことであるが、それは医師としての知識と技術を
     駆使してのことである。

     でも、ハンディキャップのある方々のお手伝いとなると
     まったく勝手がちがう。彼らが何を望み、何を欲しているか
     について、それまで私は何も知らなかったといってよい。

     いわゆるボランティアとして、私たちは素人である。
     まったくの素人でも、何かお役に立てるのかもということで、
     余計うれしさが増してくるのかもしれない。

     とにかく、そのような人たちと、同じ時間を共有できた
     というだけで、私はとても幸せだった。

     (草包庵・棚橋善克)

     (※この随筆は草包庵こと科長の「超音波医学」
     (医学雑誌)編集委員長時代の編集後記を改訂したものです)

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