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随筆その10
「枯れ葉の歩道」

前立腺ドック・PSAドック
棚橋よしかつ+泌尿器科
仙台市青葉区国分町2-2-11
TEL: 022-722-0028
2005年2月17日更新 携帯版(http://0028.jp/k)
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イチョウ

     診療所前の歩道で懐かしい女性に出会った。

     黒っぽい外套を身にまとい、上半身をわずか
     左に傾けるように、ゆっくりとした足取りだった。
     黒い大きな鞄を右の手に携えていた。

     銀杏の落葉の、広めの歩道をカサコソと
     ひとり歩んできた。

     その黄色と黒のコントラストが、晩秋の斜めの
     日差しのなかでロートレックの絵のように
     茫漠とした寂しさを感じさせた。

     「その重たそうなかばんの中には
     何がはいっているんですか?」

     「この中には楽譜がぎっしり詰まっているんです。
     それが私の命なんです。」

     かつて幾度か訪れたことのあるその人の店は、
     とあるビルの5階にあった。

     黒く重いドアを開けると、
     広くはない部屋の左手にカウンターがあり、
     その奥にグランドピアノが光っていた。

     その人は、そこで決められた時間ごとに
     ピアニストの伴奏でシャンソンを歌って
     聞かせるのだった。

     その人は、大好きなシャンソンで身をたてる
     ことを志していた。が、かなわず、シャンソン
     居酒屋を開き生計を立てていた。

     それでも、年一回は小さなリサイタルを
     しながら努力を続けている。大きな夢を
     かなえる日をめざして。

     ゆっくりと歩きさるその姿は、
     透き通るような秋の空気のなかで、
     心なしか力強さに変わって見えた。

     なかなか治りにくい病気もある。それでも、
     いつか完治する日のくることを念じて、
     努力を続ける人を尊いと私は思う。

     あきらめず努力する姿は、だれが見ても美しい。

     (草包庵・棚橋善克)

     (※この随筆は草包庵こと棚橋善克が、
     雑誌「超音波医学」編集長になる前の
     編集委員時代に記した編集後記を推敲したものです)

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