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随筆その1
「サナトリウムにて」

前立腺ドック・PSAドック
棚橋よしかつ+泌尿器科
仙台市青葉区国分町2-2-11
TEL: 022-722-0028
2005年2月17日更新 携帯版(http://0028.jp/k)
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     「この患者さんは、もう22年もここに入院されているのです」
     と、先生はおっしゃった。

     私は、えっと驚き、ためらいがちに、その患者の目をみた。
     でも、その人の目は澄んでいた。それは、どこまでも
     透き通るような清らかさだった。

     病室からは木々の緑が美しく見え、
     少しだけ開けられた硝子窓からはやわらかな風がながれこんでいた。

     学部3年(医学部5年)のとき、訪れたある病院での経験である。
      その病院は、もともとサナトリウム(今風に言えば、療養型結核治療施設)
      として設立された。さすがに、22年も入院していたのはその患者のみ
      であったが、10年以上入院している人はたくさんいた。

     私が実習をさせてもらったそのころは、すでに結核の手術は
     減りつつあり、肺の手術と胃の手術がほぼ同数となっていた。
     今また、結核は増加の兆しをみせてはいるが、そのころは
     結核の後始末の時期であったのだ。

     わたしは、今でもその人の目の清らかさを思い出すことがある。
     あの人の目は、なぜ、あんなに澄んでいたのだろう…。
     年余に亘り入院する羽目になれば、たいていは、
     「どうして自分だけ、こんな病気を罹ってしまったのだろう?」
     と、健康な人を羨み、自分の悲哀をなげくであろうに。

     わたしたちは、最新の医学については、一生懸命勉強している
     つもりである。でも、患者さんの心の中まで、どれだけ
     近づけているかと考えると、はなはだこころもとない。

     あの病院では、教えて頂いた外科の先生、そして病院の
     職員たちがきっと特別の努力をしていたのだろうか…と、
     今にして思うのである。

     (草包庵・棚橋善克)

     (※この随筆は草包庵こと科長の「超音波医学」
     (医学雑誌)編集委員長時代の編集後記を改訂したものです)

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